白人至上主義(はくじんしじょうしゅぎ、英語:white supremacy、white nationalism)は、人種差別的思想のひとつ。
その主張は三大人種の一つであるコーカソイド(白人)がモンゴロイドやネグロイドよりも先天的に優れているという点に集約される。
人種差別は古来から人類社会に存在する差別意識であるが、その中でも白人至上主義は代表例として想起され易い。
近世以降、ヨーロッパ人による海外進出が進んでいくにつれて、従来は直接的には関与しなかったアジアやアフリカを支配下に収め始める。そうした中、欧州諸国では自分達が同じ人類である植民地の住人を奴隷化したり収奪の対象とする事を正当化する為、その地の住民(地理的な関係上、黄色人や黒人が対象となる)は自分達(白人)とは異なる劣った人種(場合によっては同じ人間としてすら認めない)であり、対等に扱う必要性はないと考える白人優越思想が広まった。植民地化された地域が欧州列強に比べて後進的であったことや、実際に風貌や体格の面で差異がある事がこの差別思想の信憑性を裏付け、植民地を重要な収入源とする各国政府もこれを後押しした。
当時はチャールズ・ダーウィンらの研究によって生物学(ひいては人種研究)が飛躍的な進化を遂げた時期ではあったが、その研究は現在に比べれば欠陥が多く、導き出された答えにも偏りが存在していた。研究を担う学者達がヨーロッパ人で占められていたのも、人種研究に関する公平さを欠く遠因となった。実際、先述した近代生物学の権威たるダーヴィンの従兄弟は、白人至上主義の影響を多分に受け、今日では疑似科学・人種差別思想と考えられている優生学を創始したフランシス・ゴルトンであるが、ダーヴィンはゴルトンの優生学に対して一定の評価を与えている。これはゴルトンの優生学のような人種思想が当時の欧州人にとって突飛な意見ではなく、学術的な世界ですら一般的な意見として罷り通っていた事を示している。古典的な段階における植民地主義や帝国主義の場合、この人種差別的なイデオロギーは露骨で素朴な型で広まっていた。
現代に入って植民地諸国の独立が進み、更なる進歩を遂げた生物学による人種研究が進められても、白人至上主義はヨーロッパ(或いはその流れを汲む国々)の人々の意識と無関係になったとは言い難い。各国憲法、国連憲章などにおける人種差別の廃止、人種差別撤廃条約や公民権運動などによる働きかけにも拘らず、合衆国の法学が白人性の概念を取り上げて問題化しているように、そのイデオロギーと暴力は存続している。
定義 [編集]
先に述べた通り、「白人」が他の人種に優越すると主張する立場ではあるが、肝心の「白人」の定義は論者ごとに異なる曖昧さを持つ。
元より三大人種という概念自体が差別思想や宗教的価値観・政治的主張などから恣意的に作れた経緯を持つ為、必ずしも科学的な純生物学的検証による線引きが行われている訳ではない。白人至上主義が唱えられた国の状況によって「人種の線引き」や「優等さの順位」は容易に変動するので、明確な定義を客観的に行うのは難しい。
「白人至上主義」の類例
KKK(クー・クラックス・クラン)
アメリカにおける白人主義の代名詞としてしばしば紹介される著名な団体。元々は南北戦争後に旧南軍兵士らが立ち上げた交遊会であったが、次第に南部の反黒人グループを統合する存在として台頭した。政府により非合法化された事で一度解体されたが、後にキリスト教原理主義と結びついて(その為、当初は無かった「反ユダヤ主義」などの宗教的教義が加えられた)、「第2のKKK」として再興された。アメリカ中南部を中心に活動し、最盛期は構成員が知事に選出されるなど権勢を極めた。しかし性愛問題など人種主義から離れた部分への論難やリーダーのスキャンダル事件によって衰退し、現在は無数の小規模組織に分裂している。Stormfront管理人のドン・ブラックはKKKと太いパイプを持っており、ネット上の白人主義でもKKKが影響力を維持している。
アメリカン・ナチス党
その名の通り、ナチスの後継を自負するネオナチ系団体で、退役軍人のジョージ・ロックウェルによって結成された。ナチスのアーリア人主義(ヒトラーは「アーリア人」を「白人」と同意義の用語として用いていた)と反共主義を掲げ、また反ユダヤ主義の観点から「第2のKKK」を離脱した者達も多く含まれていた。とはいえヨーロッパのネオナチ運動が必ずしもナチズムと同一ではない様に、彼らもまた独特の政治的主張を行っていた。指導者ロックウェルの暗殺によって壊滅するが、この運動は後述するナショナルアライアンスへと繋がり、アメリカの白人主義者へ多大な影響を与え続けていく。
ナショナルアライアンス(国民同盟)
アメリカン・ナチス党の元幹部であった物理学者ウィリアム・ピアスによって指導された運動。思想自体は概ねアメリカン・ナチス党と変わらないが、俗に「ターナー日記」と呼ばれる他人種への怨恨に満ちた文書を広める事で、アメリカン・ナチス党の理念を白人至上主義全体に浸透させた事に大きな特徴がある。この「ターナー日記」は白人主義者の秘密部隊「オーダー」と、それに所属する主人公ターナーが様々な手法で有色人種を殺戮するという内容であり、同書は白人主義者のバイブルの一つとなっている。
ホワイト・アーリア・レジスタンス
アメリカン・ナチス党とKKK双方の流れを汲む団体。その成立過程から極右的な主張になりがちな白人主義団体としては珍しく極左的な革命理論を説き、「革命による連邦主義の打倒と、それによる人種別国家の樹立」をスローガンにしている。彼らはアメリカにおける人種対立の遠因は「他なる存在との共生」にあると考え、その象徴たる連邦主義と中央政府こそが真の敵であると述べている。故に彼らは他人種の根絶ではなく住み分けを主張し、同じく住み分けを望んで連邦主義と対立するのならたとえ黒人主義団体(ブラックパンサーなど)であっても共闘する。
ミリシア(民兵団)
アメリカでは独立戦争以来、市民が独自に自衛団的な民兵組織を形成している。その内容や行動理念は様々だが、その中にはネオナチやKKKなどの白人至上主義・キリスト原理主義の影響を受けたグループも存在している。
オーストラリア [編集]
白豪主義と呼ばれる白人至上主義で知られ、過去には先住民アボリジニに対する虐殺や、第二次世界大戦時における日本軍兵士捕虜に対する虐待やアメリカの黒人部隊の上陸の拒否などで知られる。
しかし近年も、2005年にシドニー郊外のクロナラ・ビーチに5000人を超える白人が集まり、暴徒化した白人集団による中東系移民への無差別襲撃が発生した(シドニー人種暴動)他、アジア人移民を拒否し白豪主義に戻ろうとする極右政党「ONE NATION」の台頭や、日本やノルウェーによる捕鯨活動に対する感情的な批判など先住民を虐殺、放逐した結果誕生した白人国家であることから、近年にいたっても白人至上主義的な言動は多い。
なお2008年に、オーストラリアの大学がオーストラリア人1万2500人を対象に人種差別について10年かけて調査した結果を発表した[1]。それによると、回答者の46%は「特定の民族はオーストラリアにふさわしくない」と回答。特にイスラム教徒や黒人、アボリジニに対する差別意識が根強いとされる。また、およそ10%が「異民族間結婚は認められず」、同じく10%が「自分たちよりも劣る民族がいる」と回答しており、未だに白人至上主義的な人種差別意識が残っていることが伺える。
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